【豊岡鞄®とのモノづくり】

CATEGORY | PRODUCTION
POSTED | 2020年10月27日
【豊岡鞄®とのモノづくり】

その起源から千年にも及ぶ歴史の中で、日本における鞄の生産地として確固たる地位と信頼を築き上げてきた兵庫県豊岡市の生産地ブランド「豊岡鞄®」。

beruf baggageが足掛け2年に渡って取り組んできた自らの生産背景の改革と再構築、そして「豊岡鞄®」との取り組みについて、その意義を改めて考えます。

【豊岡鞄®とのモノづくり】

―豊岡鞄® とは

兵庫県北部に位置する豊岡市は、日本海に向かってゆったりと流れる円山川を中心に、周囲をぐるりと山林で囲まれた日本の原風景を残す自然豊かな小都市です。市街地からほどなくして広がる田園地帯には、国の特別天然記念物にも指定されている絶滅危惧種のコウノトリが巣をつくり、自然との共生を掲げる街のシンボルとなっています。冬の日本海を代表する「松葉ガニ」や神戸ビーフの原種である「但馬牛」、神鍋高原一帯の火山灰土を使って栽培される「高原野菜」、信州上田にルーツをもつ「出石そば」など、食文化も大変豊かな地域であることから、近年では大都市圏からの移住先としても注目されています。

その街にあって、奈良時代から始まる柳細工を起源として千年の伝統と共に地域の基幹産業となっているのが「カバン」の製造業です。江戸時代に隆盛を迎えた柳行李(柳を編んだ箱型の入れ物)の生産技術と流通経路は、新素材と機械ミシンによる縫製技術の導入を機に鞄の製造業へと形を変え、明治~大正~昭和の時代へと引き継がれ現在に至ります。

「鞄の街 豊岡」では100社を超す鞄の関連企業が操業していますが、その中でも「豊岡鞄®」の商標を使用できる企業はわずかに20社ほど。兵庫県鞄工業組合(商標の所有者)の組合員企業として「豊岡鞄®」ブランドマニフェストに署名して内容遵守を誓うこと。そして、その生産品が「豊岡鞄®」の認定審査を受けて製品検査基準に基づき合格していることが条件となっています。

余談ですが、beruf baggageのインライン製品(通常アイテム)も「豊岡鞄®」とのコラボレーションアイテムを生産している工場にて同一の品質管理体制の下で生産されています。ちょっとややこしいのですが、コラボレーションアイテムとして「豊岡鞄®」の商標を使用した商品は、同一工場の品質基準審査とは別に「豊岡鞄®」の認定審査に合格している、というわけです。

【豊岡鞄®とのモノづくり】
【豊岡鞄®とのモノづくり】
【豊岡鞄®とのモノづくり】

―充実した設備環境と一貫生産

「鞄の街 豊岡」に数多存在する生産工場の中で、beruf baggageのインライン製品、そして「豊岡鞄®」とのコラボレーションアイテムの生産を一手に担ってくれているのが、昭和34年創業の㈱木和田正昭商店。「豊岡鞄®」の認定第一号企業として高品質な鞄製品を製造し続ける同社は、広大な敷地面積を活用した工場内一貫生産システムと最新設備を導入し、徹底した品質管理と丁寧なアフターフォローによる顧客満足を追求。数多くのブランド、顧客からの信頼を集める生産工場として地域になくてはならない存在となっています。

beruf baggageのブランド設立から12年という節目(ちょうど干支が一周、という意味で)に縁あって出会ったこの工場との取り組みがスタートしたのは2018年のこと。それまで続けてきていた東京近郊での鞄製造といえば “餅は餅屋” を地でいく分業制が当たり前でした。資材の調達は資材屋、革の加工は革屋、生地裁断は裁断屋、縫製は縫製職人といった具合に鞄製造に関わる各工程のプロフェッショナルによる連携作業によってモノづくりをしていました。

インディーズとしてのスタンスを大事に活動しているberuf baggageのようなブランドにとって、かつては十分過ぎるほどのクオリティとキャパシティを誇った旧来の生産背景はしかし、プロフェッショナルである職人達の高齢化という如何ともし難い問題に直面し、永続的な製品の安定供給と高水準のクオリティコントロールを維持するべく次の一手を模索していたことを思い出します。ブランド存続の危機と結論付けるには早計な、しかし、果報を寝て待つほど悠長に構えているゆとりは無い、という時期に出会った新しい工場では、各工程の最新設備がしっかり導入されているだけでなく、広い敷地面積に建てられた社屋の中でそれらが実に有機的に連動していました。

東京から片道2便の飛行機を乗り継いでの日帰り弾丸視察でしたが、新しいberuf baggageをここから創り上げていこうという決意を固めるには十分な時間でした。

【豊岡鞄®とのモノづくり】
【豊岡鞄®とのモノづくり】

―手から手へ、繋がれる技術と情熱

工場の中に整然と配置された充実の設備群を有機的に連動させているのはやはり、そこで働く老若男女の職人達の手。機械の精度がどれだけ向上しようとも、それらを巧みに操作して鞄製品を生み出していく工程に人の手は欠かせません。この “人の手” には、長年のキャリアで蓄積された経験と知識、そしてプロフェッショナルとしての情熱と誇りが宿ります。

一口に “カバン” といってもその形状や材質は多岐に渡り、全ての製品を同一の製法・工程で製造できるわけではありません。全ての作業工程は、それぞれの製品の形状や素材の特性によって最適化されなければならず、それを可能にするのが機械を操る職人たちの手となります。形状に合わせた作業順序の選定や素材に合わせた機械の動作調整等々、確かなキャリアに裏打ちされた “職人の勘” が必要とされる、まだまだアナログな世界なのです。

完全にオートメーション化されていない(意図的にしていない)という事は、当然ながらヒューマンエラーが発生する余地が残りますが、これをカバーするのが工場内一貫生産システムとなります。同一敷地内に建てられた複数棟の社屋の中で全ての工程が完結するという状況は、万が一エラーを発見した際の対処スピードの早さという点において圧倒的なアドバンテージを生み出します。また、同じ社内の生産チームとして毎日顔を合わせる人と人の間で作業工程が引き継がれていくという状況は、エラー抑止に対する良い緊張感を生み出します。作業工程が人から人へと繋がれていく、という点においては旧来の生産背景と何ら変化はありませんが、生産に関わる人と物資の時間的・物理的な移動距離が極端に短くなることが製品のクオリティコントロールには確実にプラスに作用するということを実感しています。

そして、この工場で鞄製造に携わる人々に性別や年齢の偏りがない、という事も見逃せない事実です。ベテランから若手への技術の伝承。幅広い世代の価値観の違いを下地にした議論。男性と女性の視点の違いを埋めるアイデアの擦り合わせ。そして何より、一つの指針に向けて取り組む熱量が一つの敷地の中で共有・熟成されているということが、より良い製品作りに大きく寄与している事は間違いなさそうです。

【豊岡鞄®とのモノづくり】

―産地ブランドとのコラボレーション、という試み

2020年、beruf baggageはブランド初の試みとして製品の生産者である「豊岡鞄®」を全面に打ち出すコラボレーションを展開しています。”生産者の顔が見える” という形で生鮮食品が販売されている機会は当たり前のように目にしますが、衣料品や服飾雑貨の世界(特に鞄業界)ではまだまだ数少ない取り組みとなっています。

鞄製造業の一大拠点として日本国内のみならず世界に顧客を抱える「鞄の街 豊岡」は、2006年11月に特許庁によって日本で初めてとなる地域団体商標「豊岡鞄®」の認定を受けました。奇しくもberuf baggageが本格的な活動を開始したタイミングも2006年11月…。両者は交わることなく同じ年月を歩み、縁あって2018年に出会います。そこから足掛け2年という期間を経て、インライン製品の製造ライン構築という取り組みを通じて築いた信頼関係を基に、お互いのブランドコラボレーションをスタートさせました。

この取り組みの根底には、世界に誇れる鞄製造の技術や情熱に対してのberuf baggageからの最大限のリスペクトが存在しています。と同時に、少々おこがましい私的な想いではありますが、beruf baggageというブランドや製品デザインをきっかけに一人でも多くの方に「豊岡鞄®」という存在を知って欲しいという期待も込められています。

単なるメイド・イン・ジャパンから一歩踏み込んだ、メイド・イン・トヨオカの品質。毎日を共にする “カバン” という製品だからこそ、その本質に触れて欲しい。生産者の顔が見えるという安心感を届けたい。

このコラムを読んでくれた親愛なるberuf baggageユーザーの皆さまに、この想いが届くように願って。(了)

AFTERWORD

文:佐野 賢太(beruf baggage)

写真:山川 明男(euphoria Factory)

この記事は、豊岡鞄®とのコラボレーションという取り組みについてWEBマガジン「HOUYHNHNM」さんに取材いただいた2020年現在の近況と、取り組みの準備をスタートさせた2018年頃から現在に至るまでの経緯を回想しながら書き上げました。そのわずか2年の間にも世界は刻々と変化を続けてきたわけですが、特に今年は新型コロナウィルスの世界的な流行という未曽有の事態に見舞われ、これまでのスタンダードとされてきた生活様式は半ば強制的に過去のものとなりました。あらゆる物事の「本質」が改めて問われている今、beruf baggageはこの取り組みを通じて「物づくりの本質」を再認識・再提案していければと考えています。生産者とユーザーをつなぐブリッジとしてブランドを機能させるべく、思考と実践の日々は続きます。

【関連記事】

■HOUYHNHNM

ベルーフバゲージと豊岡鞄。至高のクオリティを紐解く4つのキーワード

【関連動画】

■beruf baggage公式YouTubeチャンネル

EXPLORING THE ROOTS ―産地ブランド 豊岡鞄®を巡る

beruf baggageページ先頭へ